容赦ない迫力!リアルすぎるワニから目が離せない『イリエワニ』【絵本レビュー】

セコリ(nobico編集部)

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nobico編集部員が、おすすめの絵本をご紹介します。
今回は、福田雄介さん・関俊一さんによる『イリエワニ 』(福音館書店)をレビューします。

今回読んだ絵本はこちら

イリエワニ (福音館の科学シリーズ) 』(福音館書店)
福田雄介 文/関俊一 絵
読んであげるなら:5・6才から
自分で読むなら:小学中学年から

大迫力の大型絵本

表紙にどーんと描かれたイリエワニ。
絵本そのもののサイズが大きいので、かなりのインパクトです。
あまりの存在感に、一瞬「これ写真?」と思いましたが、よく見るとちゃんと絵でした。
ワニの生命力を感じさせる筆のタッチに、手描きならではの迫力を感じます。

息子は表紙を一目見て、この絵本を気に入った様子。母の予想通りです。
うっとりとワニの歯の数を数えたりしています。

しかし、この威圧感溢れるワニ、苦手な子だったら泣いてしまうかもしれません……。

ワニの生涯に思いを馳せる

物語は、イリエワニの狩りから始まります。
ドロガニをオオメジロサメが食べ、さらにそのサメをイリエワニが食らう。
自然界の厳しさを思い知らされる食物連鎖に、息子は目をきらきらと輝かせていました(なぜか、こういうシーンが好きなのです)。
イリエワニの生態と半生を追う物語は、息子の好きな野生動物ドキュメンタリーそのものです。

息子のお気に入りは狩りのページですが、私が心惹かれたのは母ワニによる子育てのページでした。
子ワニは「キッキッ」と鳴き声を上げるそうで、意外な可愛さに思わずにっこり。
その分、次のページで訪れる親子の別れが切ないのですが……。

イリエワニの生態もとても興味深く、淡水のイメージの強いワニが、なわばりを求めて海をさまよう姿には親子で驚きました。

ワニガチ勢による、ワニ愛にあふれた一冊

この絵本の作者は、野生動物学博士の福田雄介さん。
オーストラリアのダーウィンを拠点に、ワニの保護管理の第一線で活躍されています。
プライベートでも船に乗ってワニの撮影に出かけるという、徹底したワニ愛の持ち主です。

絵を担当した関俊一さんも、幼少期から生き物を愛し、多くの爬虫類を捕獲・飼育してきたそう。

お二人の深いワニへの愛情と専門知識が、この絵本を生み出したのだと納得させられます。

いずれ本物のイリエワニを見てみたい

すっかりイリエワニに心奪われた様子の息子は、繰り返し絵本を読んだ後、さらなる知識を求めて図鑑を引っ張り出してきました。
しかし残念ながら、絵本以上に詳しい情報は得られず。
調べたところによると、イリエワニは日本でも飼育されている施設があるらしいので、いずれ見に行ってみたいと思います。

とはいえ、やはりワニの迫力溢れる美しさは、きっと野生の中で最も輝くものなのでしょう。
そう考えると、この絵本を通じてイリエワニの魅力に触れられたことは、とても良い経験だったと思います。

狩りをし、縄張り争いをし、子孫を残す。
オーストラリアの大自然の中で、たくましく生きるワニの姿に思いを馳せ、私たちもちょっとした冒険気分を味わえました。

生き物好き、特に爬虫類好きの心に刺さること間違いなしの1冊です!

福田雄介 文・関俊一 絵『イリエワニ 』(福音館)

イリエワニ (福音館の科学シリーズ)(福田雄介 文/関俊一 絵/福音館書店)

熱帯地方に位置するオーストラリア北部。川の水と海の水が混ざり合う「汽水域」と呼ばれる一帯に暮らすイリエワニは、大きなものは重さが1トンもあり、全長6メートルを超える。体は鎧のように硬くて分厚い鱗で覆われている。気性は荒い。肉食で何にでも食らいつく。口には66本の歯が並び、何度でも生え変わる。世界最大のワニ、イリエワニ。巨大に成長した彼らに敵はいない。野生イリエワニの姿を描く初めての絵本。